子どもの頃、誰が一番長く潜っていられるか、競争しませんでしたか?
あれがフリーダイビングの基礎です。
ジャック・マイヨールがイルカと一緒に泳いでいる姿を思い浮かべる方もいるはず。彼をモデルにした映画「グラン・ブルー」は、フリーダイビングを多くの人に広めた傑作です。
ルール
スキューバダイビングのような水中で呼吸をするための酸素ボンベなどを付けずに、一呼吸で
・どれだけ深く潜れるか
・どれだけ遠くまで泳いで行けるか
・どれだけ長い時間呼吸を止めていられるか
をルールに沿って競うスポーツです。いわゆる素潜りに、「競技規則」と「安全確保のための教育、人的・物的な備え」を追加したスポーツ、とも言えます。
ただ潜ると言ってもいろいろな種目があり、海で行うもの、プールで行うもの、フィンを使った競技、乗り物を使って深く潜るものなどもあります。
どれだけ深く潜れるかを競う種目(深度競技)
- コンスタントウェイト ウィズフィン(CWT)
フリーダイビングの代表的種目。 水中に垂直に設置したロープに沿って潜れる深さを競う。足ひれと手のかき動作以外から推進力を得ることは禁止。おもりを装着することは可能だが、潜行時と浮上時でその重さを変更してはならない。 - コンスタントウェイト ウィズアウトフィン(CNF)
足ひれの装着が禁止されている点以外はCWTと同じ。 ほとんどの選手は平泳ぎのような動きで泳ぐため、泳力が記録を左右する種目。 - フリーイマージョン (FIM)
CWTとの違いは、足ひれの装着が禁止されていること、ロープをつかむ、引っ張る動作が許可されていること。 腕の力が必要となる事から、記録の男女差が最も大きい種目。
どれだけ遠くまで泳いで行けるかを競う種目
- ダイナミック ウィズフィン (DYN)
フリーダイビングの代表的種目。 水中を水平方向に泳いで行ける距離を競う。足ひれと手のかき動作以外から推進力を得ることは禁止。 - ダイナミック ウィズアウトフィン (DNF)
足ひれの装着が禁止されている点以外はDYNと同じ。 ほとんどの選手は平泳ぎのような動きで泳ぐため、泳力が記録を左右する種目。
どれだけ長い時間呼吸を止めていられるかを競う種目
- スタティック アプネア(STA)
フリーダイビングの代表的種目。 気道を水中に沈めた状態(=呼吸を止めた状態)をどれだけ長く維持できるかを競う。一般的に水面にうつぶせに浮いた状態で行われる。体の動作による酸素消費を抑えるために、競技中選手はほとんど動かない。気持ちのコントロールも競技結果に大きな影響を与える。
その他の種目
大会種目としてではなく、個人的な記録挑戦として行われているもの。
- ヴァリアブルウェイト(VWT)
潜行時と浮上時でおもりの重さを変更してよい、という以外は他の深度競技と同じ。従って、潜行時は全く泳がずにスレッドやザボーラと呼ばれる乗り物の形状をした錘につかまって、その重さだけに頼って潜り、浮上時はフィンを使用して泳いで浮上するスタイルが一般的となっている。自身の泳力を超えた速度で潜行が可能となり、なおかつその間体を殆ど動かさなくてよいことから、深く潜るという点で有利な条件となり、他の深度競技より深い記録が作られる。 - ノーリミッツ (NLT)
VWTをさらに進めて、浮上時の制限までも無くしたもの。つまり、水面で吸い込んだ空気だけを使って潜る、という以外には規定が無いという特殊な種目。通常スレッドやザボーラと呼ばれる乗り物の形状をした重りにつかまって潜り、浮上時は水中で膨らませた風船の浮力をつかう。
歴史
太古の昔、生きるために海の幸を捕っていたのが、フリーダイビングの始まりと言えるでしょう。競技としては、1949 年イタリアのレイモンド・ブッカーが、水深30m という初めての公式世界記録を打ち立てました。1960~1970 年には、フランスのジャック・マイヨールと、イタリアのエンゾ・マイヨルカが世界記録を競い合いました。1976年にジャック・マイ ヨールが人類史上初めて水深100m に到達し、1983年に56歳で105mという世界記録を達成し、「潜水の神様」と呼ばれました。
この2人をモデルにした映画『グラン・ブルー』が1990 年代に世界中で大ヒットし、多くのフリーダイバーが誕生。その後、マイヨールの愛弟子であるイタリアのウンベルト・ペリッツァーリと、キューバ出身のピピン・フェラーレスが師匠たちの闘いを引き継ぎました。ウンベルトは、世界記録を1990 年~2002 年に亘って守り続けたヒーローです。
初めての世界大会は、1996 年フランスのニースで開催され、それ以来ヨーロッパを中心に、現在に至るまで世界各地で世界大会が開催されています。
フリーダイビングの魅力
フリーダイビングは、人間の適応能力を最大限に伸ばし、母なる海で、自由に、安全に、気持ちよく泳ぐことが最大の魅力でしょう。命の危険と隣り合わせであるからこそ、アクアスポーツをより深く理解し、しっかりと事前準備をし、心も体も整え、ベストコンディションで取り組むことを求められます。やみくもに無茶をしたり、準備不足の状態で行うことは、非常に危険であることを選手たちが一番よく分かっています。
時間をかけて正しい知識を学び、練習を積むことによって、イルカやクジラと一緒に自由に海を泳ぐことができるのです。これを体験してしまうと、フリーダイビングにハマってしまう人が多いというのは、それだけ母なる海での解放感が最大の魅力かもしれません。
まとめ
日本フリーダイビング協会では、危険との隣り合わせでありながら、健全な水中スポーツの発展を促しています。
日本フリーダイビング協会 http://aida-japan.com/